NEW COMER '03年9月30日発表
SUZUKI WAGON R
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 自動車メーカーがプレス向けの試乗会を開催する場合、開催場所の設定というのは重要なポイントだと思う。たとえば飛び切りのスポーツカーなら、サーキットやテストコースを中心にしたステージがふさわしいし、サルーンなら市街地や高速道路を中心にしたコース設定をするのが一般的だろう。もちろんイレギュラーな設定、たとえばミニバン試乗会をサーキットで行なうというのも悪くないが、よほど走りに自信のあるクルマでなければ、悲惨な結末になることも予想しなくてはならない。数日間クルマを借りて、さまざまなシチュエーションで総合的にレポートするのが理想だが、現実はそうはいかない場合が多いのだ。
 ちなみに今回、ワゴンRの試乗会の場所としてスズキが用意してくれたステージは、富士五湖周辺のワインディングを中心にしたコース。路面は舗装状況が悪くかなり荒れているし、上り勾配に至っては、荷物を積載したトラックがようやく上がっていくような場所。つまり、とても軽自動車の試乗コースとは思えないステージなのだ。
  「なぜこのような場所で?」と、メーカー担当者に質問する暇もなく最初に乗り込んだのは、NA・VVTエンジンを搭載するFXグレード。40kW(54ps)/6500rpm、63N・m(6.4kg-m)/3500rpmを発揮するオールアルミDOHC、VVT(可変バルブタイミング)エンジンを搭載する主力グレードだ。2WDと4WDがあり、それぞれ5MTとコラム4ATが選べるが、試乗したのは2WDのコラム4AT車。バスッと重厚感のあるドアを閉め、エンジンを掛けると室内への透過音がかなり静かであることに気付く。
 コラム式ATながら節度感のあるシフトをDレンジに入れて走り出すと、じつに軽快に加速していく。NAエンジンながら低速トルクがあり、かつ、4ATのギヤ比も絶妙で、ストレスなく車速が上がっていく。エンジン音は、ボリューム自体は低く抑えれられているものの、音質はじつに気持ちのいいもの。とくに5500rpm以上回したときの「クォーン」という爽快なサウンドと小気味よい加速感は、ついつい病みつきになってしまいそうなほど。
 もちろんここまで回せば車内は賑やかになるが、アクセルを緩めればたちどころに静かな室内に戻るので安心を。エンジン騒音のみならず、車外騒音や足回りからの透過音もよく抑えられているので、体感スピードが実際のスピードよりかなり低く感じてしまうほどだ。
 じつは新型ワゴンRの走りで、静粛性の向上よりも進化を感じたのは、ハンドリングと乗り心地だ。旧型も決して乗り心地が悪かったわけではないのだが、荒れた路面を通過したときやハードなコーナリング時には、ときとして足回りからドタバタとした振動が伝わってくることがあった。しかし、新型は今回の試乗ステージのなかでもかなり荒れた路面を通過しても、強固なボディはビクともせず、サスペンションはしなやかにストロークしてタイヤを路面に接地させる。ステアリングに伝わってくる安っぽい振動などもなく、それでいて運転に必要なロードインフォメーションはキチンと伝えてきてくれるのである。
 次に試乗したのはFT。エクステリアも足回りも基本的にFXと同じだが、日常ユースで扱いやすいMターボエンジンを搭載したモデルだ。「日常ユースで使いやすい」といっても、FXから乗り換えると発進加速はかなり力強く、頼もしく感じる。このエンジンのいいところは、まるで1リッターのNAエンジンのようなフラットなトルク特性をもっていること。スタートした瞬間からじんわりとターボが効いているので、アクセルを軽く踏んでいるだけで、スーッと加速してくれる。急な上り坂ではFXの3分の2くらいのアクセル開度で余裕を持って上っていくことができた。価格的にはFXの96.5万円に対して107.5万円と11万円の差。FXの動力性能でも十分と思えたが、FTに乗ってしまうと……。人間とは贅沢には弱いものなのだ。
 最後に乗ったのはRR-DI。専用フロントグリルやリヤコンビランプ、エアロパーツ、ディスチャージヘッドライト、10mmローダウンのサスペンション、RR専用開発の165/55R14タイヤ&アルミホイールなどで“武装”したグレードだ。試乗したクルマのボディカラーが鮮やかなレッドだったこともあるが、エクステリアは大胆で攻撃的。だが実際に試乗してみると、じつに洗練された大人のスポーツコンパクトといったテイストだった。
 注目の直噴(DI) エンジンは確かにパワフルだが、フィーリングに荒々しい部分はなく、洗練されたNAのスポーツユニットのように低速域から高回転まで気持ちよく使える。また、55偏平のタイヤを履く足回りはFXやFTと比べると確かに引き締められてはいるものの、決してゴツゴツした乗り心地ではなく、しなやかにロールしながらハイスピードでコーナーを旋回する。
 こう書くと、ヤワなクルマと誤解されるかもしれないが、実際にはかなりスポーティな味付け。恐らく徹底して鍛えたボディやサスペンション剛性の高さがもたらした恩恵なのだろう。言い忘れたがRRはもとより、NA・VVT エンジン車に至るまで、新型ワゴンRはブレーキ性能も大幅にアップしている。
 ところで今回の試乗コースを選んだ理由について、あるスタッフの方に聞いてみたら、「ロケーションを考えて選びましたが、ここまで路面が荒れているとは思いませんでした」との答えが返ってきた。試乗する前までは、「ワゴンRにとって酷なコースではないか?」と考えていたのだが、実際には新型の走りの基本性能の高さを実感するという結果になったわけだ。
 キープコンセプトのモデルチェンジを行った新型ワゴンRだが、中身は驚くべき進化を遂げていた。クルマは乗ってみなければわからないのである。(編集部バナ重)



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